ルイ・ヴィトン
ティー ストーム


D’s SCORE(5.4 / 7.0)
雨上がりの茶畑に、
金の香りが満ちていく。

雨が上がった。茶畑に、光が戻ってくる。
雨が過ぎたばかりの茶畑。空にはまだ少し雲が残り、見渡す限りの緑の葉には、たっぷりと雨粒が残っている。
やがて雲の切れ間から太陽が顔を出す。濡れた茶葉が一斉に光を返し、さっきまで雨に打たれていた花々も、風と太陽の光に揺れながら、少しずつ香りを取り戻していく。

ティー ストームという香水から浮かんだのは、そんな雨上がりの風景だった。
ティー ストームは、ルイ・ヴィトンが2025年に中国で発表した「Journey to China」コレクションの一作。当時は「Rain Tea」の名で中国限定発売され、2026年、「Tea Storm」と名を変えて世界へと舞台を広げた。中国の茶文化をテーマに、調香師ジャック・キャヴァリエ・ベルトリュードがレモングラス、マグノリア、グラースローズ、ティーを組み合わせている。
中国の鼻煙壺を思わせる特別なボトルも、このシリーズの楽しみのひとつ。乳白色の光を帯びたミントグリーンのボトルに、サーモンピンクのキャップ。その色を見てから香りを嗅ぐと、なるほどと思う。雨に洗われた緑と、その中に咲く淡い花。香りの色そのものだ。
では、実際の香りはどうか。
ティー ストームを肌にスプレーする。
最初に飛び出してくるのは、フレッシュなレモングラス。レモンほどキンキンとしたシトラスではなく、黄色の中にちゃんと草の黄緑が混じっている。瑞々しく、爽やか。雨上がりの空気を思い切り吸い込んだときのように、気持ちまでスッとする。
そこへ、ほの甘い白いマグノリアが重なってくる。レモングラス特有の少し青臭い草の気配を、柔らかな白い花びらがふわりと包み込んでいるようだ。
黄色、黄緑、そして白。
雨上がりの茶畑で、レモンをたっぷり搾ったお茶を飲んでいるような気分になる。中国の茶畑で実際にそんな飲み方をする、という話ではない。あくまで香りから浮かんだ勝手な想像。でも、どうしてもそんな一杯が目の前に見えてくる。
少し時間が経つと、マグノリアが柔らかく、ふっくらと膨らんでくる。雨に打たれていた白い花が、陽射しを浴びてもう一度花びらを開いていくような感じ。その周りには、いつの間にか淡いピンクのローズも咲いている。
この薔薇も軽やかで、少しフルーティー。青みや冷たさはほとんど感じない。レモンとマグノリアを中心にした清潔なシトラス・フローラルを、薄いピンクの花びらがふわりと取り囲んでいる。
そして、ここがティー ストームを嗅いでいて、とても面白かったところ。
花がこれだけ広がってきても、最初のレモングラスがまだ上の方にいる。普通ならそろそろ遠ざかってもよさそうなのに、黄色い光だけが空の高いところに残り続けている。
だから時間が経っても、なかなか光が翳らない。むしろ雨雲が少しずつ流れていって、太陽の光が強くなっていくように感じる。中国三部作の中でも、ティー ストームは明らかに最も軽やかでフレッシュ。ムーン テイルに月の光を感じたとすれば、こちらはずっと太陽に近い。
つけて30分ほど。茶畑では、そろそろ茶摘みが再開される。
ここでようやく「ティー」の気配が出てくる。ただ、最初からティーノートが入っていると知らなければ、お茶だとは気づかなかったかもしれない。「なんだか少しだけビターで、グリーンで、心が落ち着く香りが出てきたな」。最初はそのくらいだった。
濃く淹れた茶葉の渋みも、燻したようなスモーキーさもない。えぐみや強い苦味もほとんどなく、摘み取ったばかりの若い葉から淹れたようなグリーンティー。とても若々しくて、「すっきり」という言葉がよく似合う。
濡れた葉に手を伸ばし、茶摘みがまた始まる。若い茶葉の緑の吐息が風に混じり始めても、その上にはまだレモン色の光がある。この高さの違う二つの香りが重なっている時間が、なんとも心地いい。
実際、2時間ほど経っても、上の方に黄色いレモンの気配が残っているように感じられたのには驚いた。レモングラスそのものがずっと残っているのか、それともいくつもの香りを重ねながら同じ爽快感を保っているのかはわからない。ただ、最初に感じた「黄色い光」が、なかなか消えない。
やがて、その光も少しずつ低くなっていく。それと一緒にティーも高度を下げ、最後にはほんのり乾いた干し草のようなニュアンスが見えてくる。雨に濡れていた茶畑が午後の太陽にゆっくり乾かされ、風景全体が静かになっていくようで、とても心が落ち着く。
ただ、体感時間は短めだった。2時間ほど経つ頃にはかなり穏やかになり、つけた場所へ鼻を近づけないと分からないくらいになっていた。
ティー ストームは、「香水をつけています」と強く主張する香りからはかなり遠いと思う。すれ違ったときに、「あ、この人、なんかいい香りがする」と思われるような香り。上質なシャンプーを使ったあとの髪に、清潔で爽やかな香りがほんのり残っている感じにも少し似ている。
レモン、白い花、淡いローズ、若い緑茶。どれも前へ出すぎず、最後まで軽やかで清潔。この爽やかさはとても好感が持てるし、日本でもかなり好まれそうな香りだと思う。
一方で、価格はかなり高めだと思う。これだけ軽やかで、肌の上では比較的早く静かになっていく香りに、その価格をどう捉えるか。そこは実際に肌で試してから考えたいところ。
重い残香を置いていかないからこそ、この雨上がりの透明感が最後まで濁らない。それでも、もう少しだけこの茶畑の中にいたかった。
さっきまであんなに雨に揺れていた茶畑に、金色の光が射している。なんて気持ちのいい眺めだろう。
雨はすっかり上がり、茶摘みも再開された。緑の葉にはまだ透明な水滴が残り、雨に打たれた白やピンクの花が風に揺れている。雲の向こうから現れた太陽が、その一粒一粒をきらきらと輝かせている。
風に乗ってくるレモンの香りに、瑞々しい花々が寄り添い、若い茶葉の緑の吐息が最後に混じる。
嵐が過ぎたからこそ、世界はこんなにも瑞々しく見えるのかもしれない。

雨上がりの茶畑に金の香りが満ちていく。その名はティー ストーム。

5.4 / 7.0
LOUIS VUITTON
TEA STORM
2025
(Rain Teaとして中国で発表)
Floral Green
フローラル・グリーン
Lemongrass
Magnolia
Grasse Rose
Tea Accord
レモングラス
マグノリア
グラースローズ
ティーアコード
Jacques Cavallier Belletrud
ジャック・キャヴァリエ・ベルトリュード

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