ピュアディスタンス
ディヴァンシェ


D’s SCORE(7.0 / 7.0)
天国の香りを、
一輪の白い花に。

また1つ、魂が震える香水に出会ってしまった。これまで1000本以上の香水に出会ってきたが、これは確実に10本の指に入る天国の香り。その名はディヴァンシェ。ピュアディスタンス(以下PD)の最新作。2025年4月11日発売。
ディヴァンシェ。それは「日本のクチナシ」の香りから生まれた、天上の楽園の花。白い朝に舞い降りた、天使の羽根の香りだ。
この香りの誕生には、日本でピュアディスタンスを紹介するSachiさんの特別な思いが息づいている。

2023年6月、初夏の東京。来日中だったPD創業者ヤン・エワウト・フォス氏は、Sachiさんとの語らいの中で、自らが思い描いていた「天国の香り」について話した。するとSachiさんは、「それなら、今まさに咲き始める日本のクチナシの香りでは?」と答えたという。その言葉は、静かな湖面に落ちる一滴の雫のように、フォス氏の心に大きな波紋を広げた。
フォス氏の情熱に火が灯った瞬間だった。その後、Sachiさんは、東京のクチナシの花から伝統的なアンフルラージュ法で香料バターを作り、パリの名調香師ナタリー・フェストエアに送った。その「日本のクチナシの香りの記憶」を受け取ったフェストエアが、香水として形にしていった。そしてディヴァンシェはこの世に誕生した。
日本のクチナシという着想から生まれたディヴァンシェ。その香りは28%という高濃度のパルファム・エクストレでありながら、天使の羽衣のように軽やかに、纏う者の肌近くで秘めやかに香り、その心を夢幻の楽園へいざなってゆく。
ディヴァンシェのトップノートは、シアーな洋梨、リンゴ、パイナップルが奏でる、みずみずしい果実のシンフォニー。果実の一滴が肌にしたたる瞬間、フレッシュな清らかさが広がる。洋梨の甘いジュースはクチナシの花のしっとり感と溶けあい、リンゴのフルーティーな酸味が香りにほのかなリズムを与える。パイナップルのジューシーな明るさは朝日のように輝き、白い花の香りを一気に解き放つ。もうこのトップだけで、身も心もとろけそうになる。
5分ほどするとミドルノートが花開く。ガーデニア、ジャスミン、チュベローズ、チャンパカ──純白の花々がミルフィーユのように織り重なる饗宴。本当に言葉を失うほど美しいホワイトフラワーアコードに、しばし呆然とする。ガーデニアの甘く無垢な香りは、ジャスミンのふくよかさ、チュベローズのクリーミーな官能、チャンパカの柔らかなトロピカル感と重なり、つややかな白い花弁がなまめかしく風に揺れる夜の庭園を思わせる。ヘリオトロープのパウダリーな余韻とクリーミーノートが肌に寄り添い、美しいセレナーデを奏でる。
やがてスプレーして2時間ほどたつと、香りは不思議なラストノートを迎える。ベンゾインの樹脂の甘さ、アンブロクサンやアンブレットのムスキーな官能が、優しく全身を包みこむ。特筆すべきは、自分の肌では、その核に「キノコのバターソテー」を思わせる、わずかな「肉感」が現れること。このややアニマリックな香りは、ミドルから白い花のブーケの輝きと併走し、美しいベージュの影のようにずっと寄り添っていたものだ。これには心底驚いた。
花の香りはときに、その奥に生々しい「肉の香り」を思わせる表情を潜ませることがある。ディヴァンシェを調香したナタリー・フェストエアは、ガーデニアの軽やかさや果実味だけではなく、ベルベットのような質感と、肌を思わせる官能まで香りの中に残そうとしたという。自分が感じた、バターをまとったキノコのような「肉香」は、その官能的な一面が肌の上で見せた、ひとつの表情なのかもしれない。これによりディヴァンシェは、あまたあるガーデニア香とは異なる、生花を目の前にしたような不思議な実在感を獲得している。うっとりするような華やかさのみならず、その奥に、無垢だけでは終わらない密やかな官能。もはや容易にあらがえるものではない。
DIVANCHÉという名は、フォス氏が「天使の舞う、想像上の天空の香り」から生み出した名前だという。その名のとおり、香りは静かに、けれど確実に人の心の結界をほどき、気づけば天上と現世の境界まで曖昧にしてしまう。
持続時間は驚くほど長く、自分の肌では朝に纏えば夜まで優雅な余韻が続く。高濃度でありながら決して重くなく、肌に溶けこむような軽やかさが10時間ほど続く。他の香水と比べても、その透明感と気品、そして日本のクチナシという着想がもたらした静けさと美しさは際立っている。
朝もやに包まれた庭園。露をのせた純白のクチナシが咲いている。柔らかな光が差しこむと白い花は揺れ、甘い蜜の雫を落とし、そのみずみずしい香りが空気中を満たす。香りの粒子は霧雨のように静かにたゆたう。どこかで小さな天使が羽ばたいているように。
ディヴァンシェ。それは、天上の楽園へといざなう白き福音。無垢なる純白の星。…いや、どんな厨二ワードもこの香りの前では無力だ。
ディヴァンシェ。なんと残酷な香水だろう。

天国の香りの前で人は、ただただ無言になる。

7.0 / 7.0
PUREDISTANCE
DIVANCHÉ
ディヴァンシェ
2025
ホワイトフローラル
エクストレ・ド・パルファム
賦香率 28%
アップル
パイナップル
ペアー
ガーデニア
チャンパカ
サンバックジャスミン
チュベローズ
ヘディオン HC
ヘリオトロープ
クリーミーノート
シャムベンゾイン
ウッディノート
アンブロクサン
アンブレット
ムスコン
ナタリー・フェストエア
Nathalie Feisthauer

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